以前、レーシングカートのSLレースに出ていた頃に競い合っていた知人から久しぶりに連絡をもらった。レンタルカートの耐久レースのドライバーとしてエントリーしないかというお誘いだった。当時使っていた車体は、別の知人に譲り渡しており、手元にはレーシングスーツやヘルメットなどのギア一式しか持っていない。カートという乗り物に乗ること自体、3年ぶり。さらに今回の会場は三重県桑名市にある「レインボースポーツカートコース」、ここを走るのは実に10年ぶりという長すぎるブランクがあった。
ブランクが相当あるので普通に走れることはないだろうと、覚悟していた。
もともと、決して速いドライバーではなかったが、カートという乗り物を経験したことがあるからこそ、厳しさも十分理解している。
走行ラインよりも体力的な面での不安の方が大きかった。
事前練習は全くせずに、スピンや不用意なクラッシュがなく無事にチェッカーフラッグを受けることだけに専念して出走してきた。
レンタルカートってどういったもの?
少しだけレーシングカートの説明をしておきたい。
分類とはいっても、何をベースにするかで分け方もいろいろだ。
個人的にはレンタルカートと持込のカートで分けるのが一番無難なのではないかと思っている。
まずはレンタルカートから。
その名の通り、サーキット運営者がレンタルで幅広いお客さんに貸出しているカートのことだ。
大半のコースではヘルメットやグローブ(軍手という場合もある)まで貸してもらえて、その場所に行けば誰でも乗って楽しむことができる。
特別なライセンスを必要としないコースも多々ある。

もちろん安全上の問題からも、走行時は長袖・長ズボンの着用が推奨される。
定期的にレンタルカートを楽しんでいる猛者も各コースにはいるが、大半の方はそうではないのではないだろうか。
レンタルカートは未経験でも十分楽しんでもらえるように、扱いやすいスピードとなっている。
タイヤはスリックだがグリップ力ではなく耐久性に重点をおいたものが一般的だ。マシン自体も丈夫な作りで、多少の接触ぐらいではびくともしない。
持ち込みカートってどういったもの?
もう1つは持込のカート。
週末になれば全国どこかのサーキットでカートレースが開催されている。
ミッションの有無、空冷・水冷など細かな仕様に差はあるが、カートと言えばこちらを想像する人も多いのではないだろうか。
カートレースに足を運べば、父親と二人三脚で参戦する子どものドライバーをよく見かける。
ただ、ステップアップ等をするにつれて少なからず、ショップやチームとの接点が欠かせないものになる。漫画の主人公だって決して例外ではないのだ。
金銭的にも厳しいのがモータースポーツ。
それは底辺と言われるカテゴリーでも同じこと。
ちなみに、底辺というと聞こえが悪いが、筆者は底辺だとは思っていない。長くドライバーをしている人もたくさんいるし、現役F1ドライバーでさえトレーニングで乗ることのある重要な基礎カテゴリーなのだ。
エンジンによって出せる速度域は異なるものの、総じて速い乗り物であることは間違いない。
マイカートでレースに出ている人はほとんどがプロショップやカートチームに属しているのではないだろうか。
技術面の指導、メカニカル面のサポートなどを受けなければなかなか戦えないからだ。

今回、誘ってもらったのはレンタルカートのイベントになる。
コース独自のレギュレーションはあるが、あくまでも不公平感の緩和のため。
レンタルカートの特徴というか醍醐味かもしれないが、それぞれのマシンの個体差が結構大きいし、ドライバーの技量以上に体重によるタイム差が大きく生じるなと改めて感じた。
出走したのはレンタルカート3時間耐久レース(エンジョイクラス)
三重県桑名市にあるレインボースポーツで定期的に開催されているイベントだ。
筆者は初めて参戦させてもらったが十分楽しかった。
エンジョイクラスということもあり、みんな和気あいあいといった感じだ。
ただ、上位ワンツーの2チームは無線を使っており本格的だなと思った。
誰と交信していたのかは不明だが、レギュレーション上、ドライバーとピットスタッフは交信してはいけないことになっているので、ピット員同士のやりとりだと信じたい。
今回は4名のドライバーで耐久レースに臨んだ。
筆者含めて3名は経験者(いずれもブランクあり)、1名はほぼ未経験者という布陣だ。
くじ引きで最初に乗るマシンを決めるのだが、当たったマシンがこれまた遅い。
ストレートでの差は歴然だった。
おそらく、長いブランク、筆者の体重と二大要素のせいだろう。走行ラインはそれほど悪くなかったと思っている。
レースリザルト
エンジョイクラスなのでチームは楽観的なムードが漂い、全員が楽しめれば良いというスタンスだった。
そういった背景もあり、プレッシャーは全くなかった。
予選タイムアタックは、くじ引きで筆者が担当することになってしまい、20台中14位という悲惨な結果で申し訳なく思うも、今の筆者の引き出しではこれが限界といったところだった。
決勝は1人2回のセッションを担当、4人で何とか3時間走行した。
体力的に非常に厳しい1日だった。レギュレーション上、ピットインごとに違うマシンに乗ったが、速いマシンもあればそうでないマシンもあった。
それはそれで非常にいい経験となった。
最終順位は12位だった。


レンタル、持ち込み、どちらの方がスキルが高いかという議論は不毛
もちろん最高速度自体は持込カートの方が速いことには間違いない。
そういうエンジンが付いているのだから当然だ。
ただ、どちらのカートであっても人より速く走ることはとても難しい。
それぞれ難しいポイントが異なるうえ、どちらの世界にもその道に長けた人がいるので、簡単には倒せないのである。
ひとたび乗ればどちらも非日常的な経験が体験できる。
季節にもよるが、汗をかき、健康的なひとときとしても過ごせる。
ただ、レンタルカートであってもスピードは出るので、きちんとルールは守り、自分が無理だと思えば、そこで止めることはケガや事故防止のために必要な第一歩だと思う。





自分のレーシングギアを持てばさらに楽しいものだ。安全面からも着用することを強くお勧めしたい。
【まとめ】自分たちの志向にあわせて参戦を
レンタルカート耐久レースの難しさはいろいろある。
レギュレーションによっても難しさは異なるが、チームのバランスと乗るカートの性能だと思う。
特に誰がどういう順番で、どれくらいのセッションを担当するのかが一番難しい。
優勝を狙うということであれば話は別だが、筆者はまずは全員が楽しめるレースが望ましいと思っている。
それぞれチームの志向にもよるので一概には言えないが、志向に合わせてメンバーを選んだり、作戦を考えたり、楽しめばいいと思う。